東京都下の表情
上京したい人のために、リアルな上京体験談を発信する上京情報メディア『上京タイムズ』。&Tokyoのコーナーでは「私と東京」をテーマに、読者から寄せられた東京にまつわるエピソードをお届けします。今回の記事を執筆してくれたのは、ako*さんです。
“私”を形作った東京
東京。私は狭くて広い東京が好きだ。 育ったのは23区の端っこ。結婚を機に少しズレた、同じく端っこに引越し、そこでもう10年以上住んでいる。
「用事」を済ませるだけなら23区の真ん中の方に行けばなんでも揃うが、電車で数駅違う場所に降り立つと、街の表情もそこにいる人の雰囲気も全然違うから本当に面白い。
小中高の頃はウィンドウショッピングやコスメショップ、CDショップ巡りが大好きで、多分年間250日くらい行っていた。今、時々お洋服のスタイリングをしているけど、その頃に端を発している気もする。
その頃の私には無敵の「定期券」があった。 家から東京都下へ片道1時間半の通学だったので、つまりはその区間どの駅にも降り放題ということだ。
ルミネのような華やかな場所から地元感溢れる駅ビルまで、それはもう全部、全部行った。
ルミネで見た可愛い8,000円のお洋服に似たデザインの洋服を、急行が止まらない街のお店で800円で買ったり。線路沿いに見えた古本屋のCDコーナーで、日本未発売の洋楽CDを100円で見つけたり。毎日の「寄り道」がものすごく楽しかったし、いろんなことを学んだ。
1時間半の小旅行とスパイスカレー
さて、話を現在に戻して。 東京は1時間半あれば大体どこにでもいけるから、しょっちゅういろんな街に行っている。数年前、友人があきる野に「Spice Curry Stand 山のスパイス」という素敵なカレーショップをオープンした。
往復3時間かかる距離も場所も、それからとっても美味しいカレーと友人の笑顔も、たまの気分転換にぴったりだ。この辺りに行くたび、東京はじゅうぶんに小旅行ができるなぁと思う。
ちなみにこのお店の最寄り駅「武蔵引田」は、東京では珍しい1面1線のホーム。上りと下りが同じホームに来るタイプだ。ぼーっとしていると、ただでさえ本数の少ない電車で逆方向に乗ってしまうのでご注意ください……(前回行った時やりました)
フランス仕込みの宝石のようなケーキたち
カレーの後は、甘いもの。続いての場所も都下、東大和市駅の話。ここは何人か友人が住んでいることもあり、私にとっては「数年に一度訪れるとなんとも言えない懐かしい気持ちになる場所」だ。
甘いものが好きな人はぜひ、この駅から少し歩いた場所にあるケーキ屋さん「パティスリー ル シャトー」のケーキを食べてみてほしい。
フランス仕込みの、見ても食べても「美しい」宝石のようなケーキたち。
季節や曜日限定販売で買えたらラッキーな「絶品カヌレ」や、店主自ら地方に収穫に行くこともあるこだわりの季節のフルーツケーキなど、いつでも惚れ惚れするスイーツに出会える場所だ。
ちなみに店主は学生時代の後輩なのだが、大学生の時「フランスに留学行ってきます」とメールをもらった記憶が、今もなぜか鮮明に残っている。
彼は野球部のイメージが強かったので、まさかその時はパティシエになるなんて思いもしなかったけれど、こんなに美しく美味しい芸術品を日々生み出しているなんて天才だと思う。
次はどこへ行こう
人生を楽しむことは「美味しいもの」とセットだと私は思う。
昔からおひとり様で焼肉もお寿司も食べれるタイプなこともあり、「小旅行気分」と「美味しいもの」、それからできれば「友人に会う」がセットだと私は嬉しいんだな、と書きながら気づいた。
今回紹介したお気に入りの場所に加えて、新しい「狭くて広い東京」を、これからさらに知っていくことも楽しみだ。
次はどこでどんな景色を見て、何を食べて、誰に会おうかな。
文・撮影:ako*